高山植物の花の美しさは無二のものです。
岩場の殆ど養分の無い、限られた環境の中で、見事な一輪を咲かせます。
沈黙の佇まいの中に「天を抜ける」美しさを感じます。
余分なものを必要としない、余分なものを足さない、知識に捉われないままの「美」が存在しています。
人間もまた感覚が研ぎ澄まされていくと、食事中の一口が多かった、おかずの一切れが過剰だったと、感ずることが出来るようになります。
栄養学で、このビタミン摂取が必要だからとあれこれ揃えても、身体がおいしく感ずるかどうかというものは別物です。知識で固めた食事は果たして体内で栄養として消化されているかどうかは分からぬものです。
今これが食べたい、からだがこれをが欲している…という感覚に敏感になると、人間に備わっている自然の「美しさ」が表に出てきます。太りすぎることもなく、痩せすぎることもなく、化粧で化けたものではない、その人の「美」が輝き始めます。
からだから湧き起こる感覚を信じ、その感覚に従い、自分を優先する勇気を育てていくと、いつしか自分を愛しく感じ、他人に対しても優しく接していける「心」が宿ってきます……。